徹底した DX 人材育成で Tableau 活用事例が続出|アスクル株式会社
役職・部門を問わず高まるデータ活用の意識とスキル
導入の背景
各部門がビッグデータを活用できるように
アスクル株式会社は、1993年の創業以来、「お客様のために進化する」という DNA を大切にしています。そして、それを実現する重要な手段の1つと位置づけてきたのが、データ活用です。同社は早い段階から、各種 KPI にもとづいて施策や業務改善を進める、購買履歴から顧客ニーズを探るなど、データ活用に積極的に取り組んできました。
その一環として同社は、2012年にデータ分析基盤を構築。2016年2月には BtoB 事業でデータ活用を推進する部署としてデータサイエンス部を発足させました。そうした体制のもと、BtoB 事業の各部門の社員は、施策を検討・実施する際、Excel 等を使って自ら、あるいはデータチームに依頼してデータを分析し、その結果にもとづいて意思決定していました。DX 推進部マネージャーでデータチームを率いる西山亜礼氏によれば、毎月締め日になると、データチームの作成した Excel の帳票が共有フォルダに大量に格納されるのが常だったそうです。
ただ、データ分析環境やリソース上の制約により、BtoB 事業で取得・蓄積される膨大なデータを活用しきれていなかった、と西山氏は振り返ります。
「社員自身でデータ分析するのが難しく、限られた人数のデータチームで膨大なデータ作成依頼に対応しなければならず、また既存のBI ツールでは要件に対応できないテーマが多かったため、完了までに1~2週間かかる状態で、しかも現場の要望にうまく応えられずに手戻りの発生することがしばしばありました」(西山氏)
そうした状況を改善するツールとして、同社は2016年、BtoC 事業ですでに活用されていた Tableau をBtoB 事業にも導入し、旧 BI ツールとの併用を開始しました。しかし、ビッグデータ分析環境の整備は進んでいたものの Tableau を扱える人材が不足していたため、Tableau の機能を最大限に活かした進化までには至りませんでした。
Tableau の導入・人材育成について(1)
Tableau 全社展開と並行してDX人材を育成
そうした状況が劇的に変わったのは2021年。旧BI ツールのリプレイスを検討した結果、Tableau の全社展開に踏み切ったのです。プロジェクトを推進したテクノロジー本部の岩元健二氏は、その経緯についてこう説明します。
「BigQuery を活用した当社のビッグデータプラットフォーム『 ASKULEARTH 』のデータを直接扱える BI ツールへ全面的に乗り換えることにし、複数の製品を比較検討しました。その結果、やはりすでに社内で利用していることから Tableau に優位性があると判断し、全社展開を決めました」(岩元氏)
BI ツールの Tableau への全面移行と並行して進めたのが、DX 人材の育成です。始まりは2020年、西山氏が中心となって、商品の企画・開発等を行うマーチャンダイジング本部の社員を対象に、Tableau とSQL の勉強会を開催したことでした。その口コミが他部門へ広がり、Tableau の全社展開のタイミングで、社の公式な活動として「データサイエンス教室」の開講に至ったのです。
「データサイエンス教室」では、25~35名の各部門からの参加者が、データチームのメンバーを講師とする2時間15コマの講座で Tableau と SQL について学びます。ポイントは、座学だけでなく実践的な学習を取り入れていること。受講生は、卒業制作として3週間かけて自ら SQL を書いて Tableau のダッシュボードを作ることで、卒業となります。
卒業生は、自分の業務でデータを抽出・分析するなどし、身につけた知識やスキルをそれぞれの部門に還元します。さらに、一部の卒業生は、次回以降の「データサイエンス教室」で講師役にも挑戦します。それによって、データチームのメンバーの講師としての負担が軽減され、増え続ける受講希望者をより多く「データサイエンス教室」に受け入れ可能になる、という好循環が生まれました。各部門から自部門に精通したメンバーが講師となることで教室の学べる幅も広がり、「知の永久機関」と呼ばれています。
受講希望者の所属部門は、当初、マーチャンダイジング本部が中心でしたが、カスタマーサービス部門やテクノロジー部門、人事・経理部門、物流部門や営業部門など、全部門に波及しています。役職や年齢層を問わず、2023年3月時点で149名もの卒業生を輩出しています。
第1回から講師役を務めるデータサイエンス部の友平早紀氏は、こんなエピソードが印象に残っている、と語ります。
「最初の勉強会に、若い社員に混じってある部門の統括部長が参加し、率先して質問したり、何十名もの参加者の前で『僕、これができました』と発表したりしてくれたのです。私を含め、周囲はとても刺激を受け、『日常の業務で忙しいけど、あの人でさえ参加するなら私も』と、役職や部門を問わず受講希望者が増えていきました」(友平氏)
BigQuery を活用した当社のビッグデータプラットフォーム『 ASKULEARTH 』のデータを直接扱える BI ツールへ全面的に乗り換えることにし、複数の製品を比較検討しました。その結果、やはりすでに社内で利用していることから Tableau に優位性があると判断し、全社展開を決めました。
Tableau の導入・人材育成について(2)
Slack チャンネルや学習動画でTableau 普及を促進
DX 人材の育成と Tableau の利用拡大を図る取り組みはそれだけではありません。データチームが「質問箱」という Slack チャンネルを作成し、BtoB 事業の全社員から寄せられるデータ活用に関する問い合わせに対応しています。
「『ユーザーの困りごとを即解決』をモットーに、問い合わせがあったら瞬時に回答しています。誰が最初に回答するか、データチーム内ではメンバーが “カルタ取り”のような感覚で競い合っていますね」(西山氏)
加えてもう1つ、Tableau の普及や講師陣の負担軽減に大きく寄与しているのが、データサイエンス部の田添誠也氏によって作成された Tableau の学習動画です。実際のビジネスシーンでよくある課題をTableau によるデータ可視化・分析でどう解決できるか、というツール利用の目的と方法を楽しく学べる動画は、社内で大好評を博し、新入社員研修などでも利用されています。そうした反響に、田添氏は大きな手応えを感じているようです。
「今までの Excel 文化から Tableau へ一歩踏み出せなかった人が、学習動画をおもしろいと感じて一気に見て、Tableau を使ってみたいと思うようになった、といった話をたくさん聞いています。制作者としてすごく嬉しいですし、学習動画の効果が社内全体で出ているのを実感しています」(田添氏)
『ユーザーの困りごとを即解決』をモットーに、問い合わせがあったら瞬時に回答しています。誰が最初に回答するか、データチーム内ではメンバーが “カルタ取り”のような感覚で競い合っていますね。
Tableau の導入効果について
各部門で活用事例続出、マネジメント層もデータ活用意識が向上
そうしたさまざまな努力と工夫によって、Tableau のユーザーと活用は各部門で拡大。結果としてデータチームで可視化・分析できるデータの幅が格段に広がった、と友平氏は喜びます。
「従来データチームは、お客様の属性や購買傾向など、主に売上に関するデータを見ていました。今まで関わりが少なかった領域のデータ、たとえば物流や在庫、廃棄、お問い合わせなどに関するダッシュボードを作り、施策を展開できるようになったのは、『データサイエンス教室』などを通じて各部門の社員と情報を交換して業務への理解を深め、部門ごとのデータ分析の切り口を取り入れられるようになったからです」(友平氏)
一方、各部門においても、「データサイエンス教室」の卒業生による Tableau を利用したデータ活用の事例が続出し、大きな成果を上げています。たとえばカスタマーサービス部門では、Tableau のダッシュボードを利用することで、従来1時間半かかっていた Excel 等によるデータ分析・レポート作成の作業時間を10分に短縮。また、蓄積されているコールセンターのデータを Tableau と連携させて分析し、問い合わせ対応の改善などにつなげています。
物流部門では、取引先との商談で Tableau のダッシュボードを利用することで、質問にその場で答えて解決するなど、商談の質の向上と時間の短縮を実現。また、出荷状況を地図上で可視化して、遠い配送センターから商品が出荷されているなどの異常を検知し、Slack に自動通知する仕組みを実装。それによって、異常の検知にかかる時間を従来の1週間から1日に短縮したり、施策の期待値と実績の乖離を早期発見して月間数百万円のコスト削減につなげたりしています。
さらに、商品部門においては、全国の倉庫における商品の廃棄金額をTableau で可視化することで、在庫配置を適正化し、廃棄金額を3か月で約数百万円削減しています。
もちろん、BtoB 事業全体としても、週次・月次のレポート作成の工数が大幅に圧縮される、Tableau により分析の深堀りがさらにできるようになるなどの業務効率化が進んでいます。また、Tableau のレポートをメールで自動配信するサブスクリプション機能などを利用し、誰でもデータを深掘りして分析できる環境を整えた結果、会議の報告などでもTableau を利用する動きが広がっています。
「Tableau ならグラフを動かしながらしっかり説明できるので、会議での報告に使う社員が増えています。それによってマネジメント層においても、『Excel やPowerPoint を使うのはやめよう』という意識が高まっています。『データサイエンス教室』に参加するマネジメント層も増えていくでしょう」(西山氏)
徹底したDX 人材の育成とTableau 浸透の工夫によって多大な成果を上げた同社。今後の展開として西山氏は、Salesforce とTableau の連携を考えているそうです。
「社内に蓄積されている営業に関する膨大なデータをTableau と連携して分析すれば、営業手法自体が変わっていくかもしれない。データサイエンス教室を卒業した各部門のキーマンをつなげてシナジーを生み出すような取り組みを進めていきたいですね」(西山氏)
現場からマネジメント層まで、全社員がTableau を駆使してデータを可視化・分析できるようになる日は、そう遠くないかもしれません。
従来データチームは、お客様の属性や購買傾向など、主に売上に関するデータを見ていました。今まで関わりが少なかった領域のデータ、たとえば物流や在庫、廃棄、お問い合わせなどに関するダッシュボードを作り、施策を展開できるようになったのは、『データサイエンス教室』などを通じて各部門の社員と情報を交換して業務への理解を深め、部門ごとのデータ分析の切り口を取り入れられるようになったからです。
※ 本事例は2023年3月時点の情報です
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